No.053 長距離ランナーの能力を決める三大要素を知ろう!

ランニング
長距離ランナーにとって「必要な能力」や「速くなる方法」は何だと思いますか? 単に「持久力」というだけでなく、運動生理学的に各要素を強化していくことが重要です。 それぞれの要素を意識的に強化し、普段の練習をより効果的なものにしていきましょう。

長距離ランナーの能力を決める三大要素

長距離ランナーの能力(持久系能力の育成)においては下記3点が重要になります。 ここでいう長距離とは、「5km~42km程度の距離のレース」として理解してください。

① 最大酸素摂取量

最大酸素摂取量とは、一定時間にどれだけ酸素を取り込み消費できるかの能力を示す指標であり、長距離ランナーはこのような酸素供給能力(肺・心臓・血管・血液など)の向上が重要になります。 ちなみに、「運動の強度を上げるほど酸素の使用量が増加していくが、ある一定の強度以上になると酸素の摂取量が追いつかなくなり、それ以上の強度で運動が不可能になる」という現象を経験したことはありませんか? このように「これ以上酸素摂取量が増やせなくなった時の酸素摂取量」を最大酸素摂取量と言い、特に3000~5000m(10~20分程度)の距離において、この数値とパフォーマンスが直結すると言われています。

② 乳酸性作業閾値

乳酸性作業閾値とは、運動強度を上げたときに乳酸濃度が急増するポイントのことです。 そのポイントより高い強度では乳酸が溜まり、運動を維持することが難しくなります。 逆にそれ以下の強度では、発生した乳酸を再利用してエネルギーを生み出しています。 競技力の高いランナーは、速いペースでもこの再利用ができ、乳酸が溜まりにくい訳です。

③ ランニングエコノミー

ランニングエコノミーとは、いかに無駄なく楽に走れるかというランニングの経済性のことです。 これは上述の①と②の要素を含め、骨格や体型など様々な要素から決定しています。 一般的には、そのうちの「ランニングフォーム」の経済性について語られることが特に多いです。
これらの前提として有酸素能力はもちろん、無酸素能力の強化も必要になります。

三大要素を強化するためのトレーニング

それぞれの要素を強化する具体的なトレーニングとそのポイントを紹介します。

① 最大酸素摂取量

最大酸素摂取量を高める代表的なトレーニングは、「インターバルトレーニング」です。 レースペース以上のスピードで繰り返し走ることで、心肺機能や筋細胞に負荷をかけます。
「呼吸をできるだけ上げ、落とさない程度に次に繋ぐ」意識をもちましょう。

② 乳酸性作業閾値

乳酸性作業閾値を高める代表的なトレーニングは、「ペース走(ビルドアップ含む)」です。 乳酸性作業閾値付近のペースを維持し、乳酸を再利用する機能を向上させていきます。
「20分程度保てるギリギリのペースで、一定に保つ」意識をもちましょう。

③ ランニングエコノミー

ランニングエコノミーを高める代表的なトレーニングは、「坂ダッシュ」や筋力トレーニング」です。 フォームと筋力には密接な関係があり、筋力を高めることでフォームが改善します。
「股関節を中心とした大きな筋肉を優先的に鍛える」意識をもちましょう。

長距離ランナーの練習方針は?

まず、長距離ランナーに必要な練習メニューを優先順位の高い方から並べるとすれば「ジョギング」「ペース走」「インターバル」と言えます。 ただし、練習を継続していく上で「故障しない」身体づくりやフォームづくりは非常に重要であり、そのために「筋力トレーニング」「リカバリー」などに力を入れることはもちろん必要です。

① エネルギー供給システムに応じた練習計画

まず、基本的な練習の内容とその割合については「エネルギー供給システムに応じた練習計画」を参考にしてください。

エネルギー供給システムについて詳しく知りたい場合は、こちら↗️

② ボトルネックに応じた練習計画

まずは「自分が優先して強化すべき能力はどれなのか」つまり、ボトルネックを明確にしていくことが重要になります。
以下の練習方法を参考にして自分のボトルネックを探していきましょう。
① 400m×15のインターバル
400m×15といったインターバルにおいて最後まで設定を守れるように疾走区間とつなぎのジョグの時間を決めます。
その上で「つなぎのジョグで十分回復出来るが一本一本がきつい」場合は乳酸性作業閾値の方がが優れているため、次回の練習ではインターバルの間を長くして疾走区間のスピードを上げ、一本一本の質を高めてやる事を心がけましょう。 逆に「最初は余裕があるが、後半になると回復しなくて余裕がなくなってきつくなる」場合は最大酸素摂取量の方が優れているため、次回の練習ではインターバルの間を短くして本数を増やし、ペースを上げずに距離を伸ばす事を心がけましょう。
② 1000m×8のインターバル
上記のメニューと意識することは同様ですが、上記のメニューと比較すると1回の疾走距離が長いため、より長い距離に対する適性を見ることが可能になります。 疾走区間内でも最初と途中と最後の200mが一定のペースで走れているか、無理のないフォームでリラックスした走りができているかを確認する場合はこちらのメニューの方が適していると言えます。

長距離ランナーQ&A

Q:前半はハイペースでいけるが、後半になると脚が止まることがよくあるのですがどんな練習をすれば良いでしょうか?
A:乳酸性作業閾値を強化する練習に取り組みましょう。
最大酸素摂取量が高いため前半に乳酸をどんどん生産することができるが、乳酸性作業閾値が低いため乳酸の処理が間に合わなくなり、乳酸が溜まってしまうことが後半に脚が動かなくなる一番の原因だと思われます。
おそらく「1500mまではそれなりに走れて、5000mが遅いタイプ」ではないでしょうか?
そのような場合は「質より量を重視した練習」つまり、ペース走やビルドアップ走を積極的に取り入れることで5000mから長い距離の強化に努めることが記録の向上につながるでしょう。 長距離の速い人は「「長めのジョグと流しをきちんとすれば、16分は楽に切れる」と言うことがよくありますが、それは最大酸素摂取量に比べて乳酸性作業閾値が低い事を指摘していることが多いです。
Q:レースに出ても前半ついていけないが、後半余力が残って不完全燃焼なことが多いのですがどんな練習をすれば良いでしょうか?
A:最大酸素摂取量を強化する練習に取り組みましょう。
乳酸性作業閾値に比べて最大酸素摂取量が低く、遅筋では乳酸を酸化できる余裕があるのに酸素摂取量を増やす事が出来ずエネルギーが出せないことが一番の原因だと思われます。 おそらくジョグやペース走ばかりやっていることが多く「5000mに比べ、1500mまでの距離が遅いタイプ」ではないでしょうか? そのような場合は、「量より質を重視した練習」つまり、レペティションやインターバルをして最大酸素摂取量の強化に努めることがが記録の向上につながるでしょう。 また、最大酸素摂取量の向上には、スピードの向上や筋力強化同時におこなう意識も重要になってきます。

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