No.023 ペース走を取り入れよう!(種類、メリット、オススメ)

バリエーション

あなたは「ペース走」というトレーニングを知っていますか?

ペース走は、長距離やマラソンのトレーニングとして非常に効果的で、多くのランナーも実践しているトレーニングです。

・ペース走とは、どんな練習ですか?

・ペース走でどんな力がつきますか?

・ペース走で意識すると良いことはありますか

この記事では、こんな質問にお答えしていきます。

 

この記事を読んでいけば、ペース走の目的や設定、ペース走をする際に意識すべきことを知ることができます。

普段のトレーニングの中に「ペース走」を取り入れ、より高いレベルのランニングを楽しみましょう!

ペース走とは?

ペース走とは「一定のペースを維持しながら、ある程度の長い距離を走るトレーニング」のことを指します。

ペース走と同じような効果を狙っておこなうトレーニングとして「ビルドアップ走」や「ウェーブ走」などもオススメです。

これらもペース走の一部として、それぞれの特徴をまとめておきますね!

選択肢 特徴 負荷
ペース走(テンポラン) 一定のペース やや高い
ビルドアップ走 徐々にペースを上げる 高い
ウェーブ走(変化走) ペースを上げ下げする 高い

なお、この記事で紹介する「ペース走」は「途中に休憩を挟まず、続けて走る練習」として捉えてください。

それでは、それぞれの特徴を優先順位の高い方から確認していきましょう!

① ペース走(テンポラン)

まず、一般的にペース走(テンポラン)と呼ばれるものは、「最初から最後まで一定のペース(テンポ)を維持して走るトレーニング」のことを指します。

具体例
  • 1kmを4分のペースで10km走る
  • 1kmを5分のペースで20km走る

このようにペース走は「距離とタイム」を基準に決めていくことが一般的です。

そのほかにも、周回コースを用いて「1周3分のペースで10周走る」というような方法でも同じようなトレーニングが可能になります。

つまり、距離を稼ぎつつ、レースでの目安のペースや自分の現状を知りたい場合にオススメのトレーニング方法です。

5000m以上の距離を走る長距離ランナーにとっては、ジョギングの次に重要となってくる基本的なトレーニングとも言えるでしょう。

② ビルドアップ走

ペース走において「徐々にペースを上げていく」ようにアレンジする場合を、ビルドアップ走と言います。

具体例
  • 前半は1km4分、後半は1km3分30秒のペースで走る
  • 1km4分のペースから2kmごとに10秒ずつペースを上げて走

ペース走と比較すると「前半は余裕をもって動きを確認し、後半は乳酸が溜まった状態で動かす」という状況になります。

つまり、距離を稼ぎつつ、負荷もかけるトレーニングをしたい場合にオススメのアレンジ方法です。

③ ウェーブ走(変化走)

ペース走において「ペースの上げ下げを繰り返す」ようにアレンジする場合を、ウェーブ走(変化走)と言います。

具体例
  • 最初の1kmは4分、次の1kmは3分30秒のペースで走る
     → 交互に5回繰り返して10km走る

ペース走と比較すると「早いペースの1kmで乳酸を溜め、遅いペースの1kmで乳酸を処理する」という状況になります。

つまり、ペース走の効果に加えて、試合のようなペース変化にも対応したトレーニングがしたい場合にオススメのアレンジ方法です。

ペース走の主な効果は?

先ほど紹介したような、ペース走(ビルドアップ走やウェーブ走を含む)によって得られる主な効果を紹介していきます。

① 乳酸性作業閾値の改善

乳酸性作業閾値とは、運動強度を上げたときに乳酸濃度が急増するポイントのことです。

そのポイントより高い強度では乳酸が溜まり、運動を維持することが難しくなります。

逆にそれ以下の強度では、発生した乳酸を再利用してエネルギーを生み出すことが可能です。

競技力の高いランナーはこの乳酸処理能力が高く、速いペースでもこの再利用が可能なため、乳酸が溜まりにくいと言われています。

Tペースでのペース走は、この乳酸性作業閾値に近いペースで走ることによって、乳酸の処理能力の改善を狙うことが一番の目的です。

② 心理的不安の解消

一定のペースで走るトレーニングは、ペース感覚を養い、心理的な不安を解消することも目的のひとつです。

目標とするレースに近い状況をトレーニングで再現することによって、「この距離ならこのペースで走れる」といった大体の目安をつくることができます。

また、あるペースに身体を順応させるという視点もありますが、それを事前に試しておくことによって心の準備ができることの方がメリットがあるのではないでしょうか。

具体例
  • レースより遅く、レースより長い距離を走る →  距離に対する不安の解消
  • レースペースで、レースより短い距離を走る →  ペースに対する不安の解消

このように自分の課題に応じてMペースやEペースでのアレンジを加えていくことで、心理的不安を解消することが可能になるでしょう。

③ 心筋や毛細血管の発達

走るペースが上がると心拍数や拍出量が増加し、心筋が活発に働きます。

ペース走はジョギングよりも速いペースでおこなうため、より短時間で心筋に負荷をかけることが可能です。

また、筋肉が必要とする酸素を送るために、毛細血管も同時に発達していきます。

これらの効果はジョギングでも得られますが、ペース走によって負荷のバリエーションを増やすことができるでしょう。

ただし、心筋や毛細血管の発達を目的とする場合は、刺激時間が長い程効果が高いため、Eペースでできるだけ長く走ることをオススメします。

ペース走のペースの目安は?

トレーニングの目的に合わせたオススメの設定を以下に3つ紹介します。

それぞれの目的や特徴を理解し、ぜひ参考にしてみてください!

① E(easy)ペース

Eペースは、速めのジョギング(フルマラソンのレースペースより遅い程度)のペースです。

Eペースで走る場合は、1回の練習につき、30分〜150分程度の疾走時間を目安におこなうと良いでしょう。

また、速めのジョギング、インターバルトレーニングの繋ぎ、ウォーミングアップ等での基準にもなるペースです。

Eペースでおこなうペース走は、距離走(ロングラン)と呼ばれ、長い距離を走り込むことを目的に実施するのが良いでしょう。

② M(Marathon)ペース

Mペースは、マラソンを走る程度(ハーフ〜フルのレースペース)のペースです。

Mペースで走る場合は、1回の練習につき、30分〜80分程度の疾走時間を目安におこなうと良いでしょう。

Mペースでおこなうペース走は、身体的な効果はEペースとさほど変わりませんが、60分実施するとTペースでの20分と同様の効果があるとも言われています。

また、心理的には「ある程度速いペースで走れた」という自身にも繋がるでしょう。

③ T(Threshold)ペース

Tペースは、乳酸性作業閾値改善(10km〜ハーフのレースペース)のペースです。

このペースは乳酸処理能力を高めることができ、持久力の向上に適しています。

ペース走は、Tペースでおこなうことが最も多く、20分〜40分程度の疾走時間を目安におこなうと良いでしょう。

最初はインターバル形式でこのペースに慣れ、徐々に1回で走れる時間を長くしていく方法も効果的です。

このペースでの1日の疾走距離の合計は、週間走行距離の10%程度にしましょう。

ペース走の基本メニューは?

それでは、具体的なメニューをオススメ順に紹介していきますね!

これらの設定は、ある程度の競技力が高い人向けになっていますので、アレンジする場合は距離ではなく、ペースと時間で決めるようにしてください。

① 12~16kmペース走(Mペース)

乳酸性作業閾値の改善が主な目的であり、60分程度の時間をMペースで走るトレーニングです。

Mペースは比較的余裕があるペースですので、日頃から無理なく取り入れやすいでしょう。

② 8~10kmペース走(Tペース)

乳酸性作業閾値の改善が主な目的であり、20〜40分程度の時間をTペースで走るトレーニングです。

Tペースは維持するのが難しいペースですが、短い時間で効率よく強化しやすいでしょう。

③ 6~12kmビルドアップ走(Mペース→Tペース)

主に800m前後の距離を専門としている中距離ランナーは、ペース走が苦手な人も多いです。

ペース走が苦手な人は、距離を若干短めにしたり、余裕をもったペースから徐々に上げることで達成しやすくなるでしょう。

ペース走で意識することは?

ペース走を実施する際に意識すると良い点を、重要度の高いものから順にまとめましたので、以下のような視点をもって取り組んでみましょう。

① 自分の現状を把握する

一定のペースを保って走ることで、自分の体力や走力を把握することができます。

具体例
  • どれくらいの距離を
  • どれくらいのペースで
  • どれくらい余裕をもって

このような視点でペース走をおこなえば、自分の現状を知るためのランニングとしてペース走は非常に有効なトレーニングになります。

② 余裕をもって実施する

ペース走は「ペースが速ければ速いほどトレーニング効果が高い」というわけではありません。

ペース走の主な目的は、乳酸性作業閾値の改善のため、Tペース程度を目安に実施しましょう。

例えば、Tペースを超えたペースで走るにつれて、徐々に身体が乳酸を処理しきれなくなり、「足が動かない」「苦しい」といった状態が生じてきます。

しかし、この状態で無理やり動かすことは、キツさが増す分だけ乳酸性作業閾値の改善効果は低くなってしまうのです。

その日の調子や疲労具合も考慮すると、少し余裕がある程度のペースで最後まで走り切ることの方が有効だと言えるでしょう。

③ 刺激時間とその効果を理解する

遅めのペース走をおこなう場合は、前半はジョギングに近い効果が得られ、後半は乳酸性作業閾値の改善に効果があります。

速めのペース走をおこなう場合は、前半から乳酸性作業閾値の改善を目的とし、効率性を上げています。

例えば、「Tペースでのペース走20分」と「Mペースでのペース走60分」は乳酸性作業閾値の改善においてほぼ同等の効果があると言えるでしょう。

このような視点で捉えると、トレーニングの効率性や心理的な余裕を考慮できるため、良いトレーニングが継続できるはずです。

④ 目標走行距離を補う

長距離ランナーにとっては、走行距離を増やしていくことが練習を構築する際の土台となります。

ジョギングだけでは、ペースが遅いため走行距離が稼ぎにくく、ランニングとしては負荷が少なすぎます。

また、強度の高い練習だけでは走行距離が少なくなるため、ペース走はどちらの要素も補うことができる重要なトレーンングと言えるでしょう。

⑤ 回復&ランニングエコノミーを重視する

Eペースでのペース走は、距離を稼ぐうえで練習の中心的な役割を担っています。

しかし、距離を稼ぐことを重視するあまり、「正しい走動作」や「高強度練習からの回復」という視点を忘れないように注意してください。

ペース走を実施しても足の運びが良くない場合は、ジョギングに切り替えるくらいの方が良いでしょう。

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